ホーチミン市・国立伝統医学病院創立50周年記念式典及び国際科学会議・伝統医学研究所見学



日時 2025年12月22日(月)・23日(月)
場所 タンソンニャットパピヨンコンベンションセンター
ホーチミン市ドゥックニャン区ホアンヴァントゥ通り202番地
国立ホーチミン市伝統医学研究所・伝統医学病院
参加者 (公社)全日本鍼灸マッサージ師会災害対策委員長 仲嶋隆史
(公社)日本鍼灸師会危機管理委員長 是元佑太
随行者 (公社)全日本鍼灸マッサージ師会 長嶺芳文会長
・狩野裕治副会長・尾野 彰副会長・北川裕基業務執行理事・川端隆治千葉県師会長
日本鍼灸マッサージ協同組合 坂本 一理事
今回(公財)国際技術財団(JIMTEF)からの要請でホーチミン市伝統医学研究所国立伝統医学病院創立50周年記念式典及び国際科学会議で日本における鍼灸マッサージ師の災害支援活動について講演してほしいという依頼があり災害支援鍼灸マッサージ師合同委員会が受け代表の是元佑太先生、副代表の仲嶋隆史、その他元災害医療派遣チーム(DMAT)看護師の小塚浩氏、柔道整復師の森倫範氏の日本人3名が国際科学会議で講演した。
式典はベトナム政府保険省伝統医学管理局局長、ベトナム東洋医学会中央委員会会長の挨拶にはじまり、在ホーチミン日本国総領事小野益夫氏も出席、日本からはJICA主席駐在員唐澤雅幸氏、(公社)日本柔道整復師会会長長尾淳彦氏、副会長竹藤敏夫氏、田沢裕二氏、現地柔道整復指導員山本清氏、浪尾敬一氏、JMTEFコーディネーター依知川氏が参加した。
発表はヨガと現代医学;伝統の統合・ホリスティックな健康のために・ハノイにおける混合不安障害およびうつ病性障害の支援的治療としての電気鍼治療の有効性評価・PG60硬質治療による痔核治療:伝統医学研究所における50年の歴史と応用・頚腕症候群における痛みの緩和および可動性に対する修正針ナイフ療法の影響・慢性不眠症および心脾欠乏症患者におけるカットガット埋めこみと鬼皮湯の治療効果・など伝統医学を用いた発表を外科医、救急心臓科、薬科大学、研究所副所長など10名の先生が行った。
日本からは災害対応における急性期と亜急性期・回復期支援と補完医療の役割・自然災害発災時、柔道整復術に何が出来るか?地震災害の救護活動からみた柔道整復術の役割とベトナム伝統医師の未来への提言・日本国内における鍼灸マッサージ師の災害支援活動について3題発表した。
日本柔道整復師会は2年前から伝統医学研究所内の伝統医学病院内で古来の柔道整復術をベトナムのリハビリ科に教授するプロジェクトをJIMTEFが立ち上げ2028年まで継続するとのこと。2名の柔道整復師が病院内で常駐している。
国際科学会議終了後伝統医学研究所創立・発展50周年記念式典が再度行われ、ガラディナー(懇親会)が始まった。徐々にお酌などが始まり病院関係者、医師、看護師など様々な方々から歓迎を受け情報交換が始まり、日本に来た際にはまた会いましょうなどと和気藹々となり交流が持てた。
翌日、伝統医学研究所および伝統医学病院の入院病棟、外来病棟の見学を行った。通訳はホーチミン市医科大学内科医のタイ先生にお願いし伝統医学研究所所長、副所長のラン先生がベトナムの医学事情の説明を受けた。
まずベトナムの鍼灸教育は6年間医学教育を受け西洋医学専門と伝統医学専門に分かれる。しかもどちらともレントゲンや検査、薬の処方など日本では西洋医学のDrしかできないことが伝統医学の先生は出来ることに驚いた。これは6年間の医学教育を受けた伝統医学を使える医師だからである。また視覚障害の学生もおり同様の教育を受けている。
開業するためには6年間の医学教育終了後2年間病院実習を行い、国家試験受験後5年間病院勤務を経て初めて開業が出来る。大学以外に2年、3年の専門学校があるがその卒業生は田舎でしか業が出来ないとのこと。
鍼灸の研究も行っており伝統医学研究所は鍼灸学会の拠点でもあり会員は6,000人。毎月勉強会が行われている。
ベトナムは雨期に豪雨災害が多く本研究所もボランティア活動を少しずつ始めているが、日本のように組織だっておこなわれておらず、日本の災害支援鍼の技術を伝授してほしいとのこと。
またスポーツ選手に対する伝統医学治療はほとんど行われておらずこの点も日本の技術を伝授してほしいとのこと。
ベトナムは国が伝統医療を認めているため90~95%以上保険診療ができ鍼治療、マッサージが適応される。鍼治療で一番多い新患はリウマチや脳梗塞後の後遺症であるがその他日本と同様、内科系、眼科系、小児科系など幅広く行っている。小児科は自閉症にも多く使われている。最近老人も増えてきているので老年医学分野にも力を入れていく予定。
伝統医学病院では入院病棟、外来病棟があり常に鍼灸治療を行っている。一日平均100名の外来患者を診て、施術時間は問診に10分、施術に30分ぐらい。ベトナム人は30分以上待たせると怒り出すそうだ。使用する鍼は中国製。理由は日本製の鍼は値段が高い事が主で、保険での治療が多という面もある。施術方法に関してはほぼ鍼通電を使用するため太くて長い鍼および長鍼を使うことが多い。
日本と違うのは西洋医学的検査(採血、レントゲン、他検査など)を行い東西融合の治療を行っているため施術時間、施術料金等はその内容によって異なる。
西洋医学と伝統医学を使うが明確な境界がなく医師の判断で行っている。伝統医学は中国からの影響なので日本と同様素問霊枢を基礎に行うやり方とベトナム独自の鍼灸術(ベトナム伝統医学のトンティン)を使用する。
現在伝統医学病院整形外科では急性外傷の治療を柔道整復術で行うための5年間のプロトコールを立て、骨折の整復、脱臼など手技を用いて行おうとしておりJMTEFコーディネーターのもと日本柔道整復師会が主となり現地で先生を派遣し指導に当たっている。現在柔道整復術は保健省では認めてもらうように交渉し、リハビリの中で鍼灸、マッサージ、柔道整復が用いられるようにしたいとのこと。
最近、伝統医学病はメディカルツーリズムで外国人が健康のためにこの病院を使うこともあることは驚いた。
今回の視察及び発表ではガイドや通訳の方を含め老若男女と触れ合うことが出来たが、平均年齢が29.6歳と若く平均年収が日本円で100万程度と、日本とは環境が全く違い、何より衝撃的なことが若い人たちは日々の生活が精一杯で、しかも大学を出た優秀な方であっても将来夢が持てないということだった。いかに日本人が豊かで恵まれているかを実感した。
医師に関しても日本と全く違い車を持てる身分でなくバイクが当たり前で金銭的に余裕があるのは軍人、警察官、公務員とのことでしかも生まれたときからその将来が決まっていることも共産圏ならではと痛感した。
しかし鍼灸事情に関しては日本よりはるかに学ぶ時間も長く、知識を持ってまた誇りを持って従事している姿は見習うべきことだと思う。
災害やスポーツ分野に関してのベトナム鍼灸事情はまだ遅れることもありオファがあれば再度訪れる等、協力をしたい。また伝統医学病院医師が是非日本で鍼灸を学びたいとのことだったのでJIMTEFを通じて日本のあはき師とベトナム医師との交流が今後発展していくことに期待している。(報告:業務執行理事 仲嶋隆史)

