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平成21年度第3回生涯研修会の報告


今回の研修は四国ブロック合同研修会の予定が変更になりましたが、愛媛県、香川県から参加いただきありがとうございました。
同じテーマで研修出来ましたことを喜び、始まりの一歩としたいと思います。

また、県内会員の方々にはお手伝いをいただきありがとうございました。

遅くなってしまいましたが廣門先生から事前に送っていただいていた永田勝太郎先生著『痛み治療の人間学』なども参考に研修会の報告をさせていただきます。


開催日時:
8月30日(日)10:30~15:30

会場:
自治会館 7階

講師:
国際鍼灸専門学校専任教員
日本東洋医学系物理療法学会理事
廣門靖正先生

テーマ:
「統合医療について」

参加者数:
39名(県内会員27名、愛媛県4名、香川県8名)



〈午前中の講義〉
1.
統合医療登場の背景には1980年代に米国から発した代替医療があり、その後、相補・代替医療(CAM)に転化した。2000年ころアンドリュウ・ワイル博士(著書*癒す心、治る力*人はなぜ治るのか)が「統合医学」を提唱した。
統合医学とは従来の西洋近代医学に、代替医療の長所を取り入れた新しい医学で患者中心の医療を行おうとする新しい治療体系である。

廣門先生が師事する医学博士の永田勝太郎先生は御自身の病の経験から痛み学を中心とした全人的医療の研究と普及をライフワークとされている。
永田先生が主宰する国際全人的医療学会や日本実存療法学会では全人的医療を目指しており統合医療はその方法やプロセスであるとしている。


2.
全人的医療は患者を身体的、心理的、社会的、そして生きる意味、責任、自由をもつ実存的存在として全人的に理解しインフォームドコンセントにより患者と良好な関係を築くことからはじまる。

 全人的医療では、現代医学と伝統的東洋医学は患者固有の自己責任による自己決定を行うという自律性を考慮にいれ相互補完的に関わる。
それらの架け橋は実存的視点にたった心身医学である。
チーム医療では、キュアとケアのバランス、瀉法と補法のバランスが重要となる。


3.
統合医療において鍼灸・マッサージ師は治療者―患者の良好な関係構築のため、プロフェッショナルとしての治療的自我を築きコミュニケーション能力の向上やカウンセリングマインド(傾聴、受容、支持、保証、共感)の向上をはかる必要がある。
そして、健康創成の場を提供し補法を中心として生体反応を最も望ましい方向に導く役割がある。


4.
症例報告
・線維筋痛症について
・子宮ガン患者の症例



〈午後・線維筋痛症の診断基準・トリガーポイント刺鍼法実技〉
線維筋痛症は典型的な慢性疼痛疾患であり最近注目されるようになったもので患者は人口の2%、約200万人、女性に多い疾患あるが本症に確実に効果のある治療法は見つかっていない。
痛みの他に睡眠障害、慢性疲労、顎関節症、過敏性腸症候群、パニック障害など多くの合併症を伴う為、症状は多彩である。
原因は不詳といわれるが、患者さんの生き方、遺伝、感染などが複雑に絡まり発症する。
このようなことから治療には全人的治療が必要な疾患である。


診断基準
(1)慢性で全身的な痛み
(2)器質的疾患や炎症性疾患がない
(3)全身18ヶ所の定められた圧痛点(4㎏/㎠以上)が11ヶ所以上ある
圧痛点は1990年米国リウマチ学会の基準であるが9つの経穴と一致していている。左右で18ヶ所となる
(天柱・扶突・肩井・天髎・神蔵・手三里・胞肓・環跳・血海)
(4)3ヶ月以上持続している


トリガーポイント刺鍼法
トリガーポイントは筋肉中に索状硬結として触擦でき、独特のねっとりした感触がある。
そこを圧すると特有な関連痛や過敏反応を起こす。
トリガーポイントは多数発生することもあるのでよく触擦しそれぞれを不活化する必要がある。

実技に使用した鍼…ディスポ鍼でセイリン製寸6の1番(プラスチック鍼柄)
衛生面から鍼施術時は両手に手袋着用している。
刺鍼時は右手母指と中指で鍼管の下部を保持し示指で切皮弾入した後、鍼管を除き鍼柄のみをもって操作し、1本の鍼は1ヶ所のみの使用であった。
左手はトリガーポイントの索状硬結が逃げないよう把持する場合や示指と中指で索状硬結を押さえる場合があった。

トリガーポイントに鍼尖が当たり単収縮が起こったところで軽く雀啄し硬結がゆるめばさらに鍼を進める場合や2~3分置鍼する場合があった。

トリガーポイントとそうでないところで鍼通電を比べたところトリガーポイントに通電した方が広範囲に反応した。


実技症例
・項部・後頚部・肩背部・肩・腰部

愛媛県師会の浦川会長が実技モデルになってくださり後日経過報告をいただきましたのでご紹介させていただきます。

主訴:
数ヶ月前より右肩関節の痛みと可動域制限があり特に外転の制限がきつい

施術:
肩関節周辺のトリガーポイントに数カ所刺鍼後、かなり可動域は改善したが三角筋に違和感が残るとのこと。
三角筋の前部と後部に3本ずつ刺鍼し数分置鍼をして終了した。

経過:
以下、浦川先生からの経過報告の転記です。

ハリ施術を受ける前は右肩の挙上は前方に120度外転は70度。
外旋、内旋は計るまでもなくかなり悪かった。
当日観察された先生はご存知の通りであるがトリガーポイントへの単刺術により改善が施術直後に見られた。
挙上については可動範囲並びに外転はすばらしく改善が診られた。
時間が過ぎて金曜(9月4日)もすでに終わろうとしていますが改善された可動範囲は調子よく持続しています。



文:泉木礼子

 

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