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はり・灸・マッサージの保険診療について(医師の方へ)


◆同意書を書いていただくお医者様へ

 健康保険を利用しての鍼灸マッサージは、健康保険法の療養費制度(第44条の2項)に基づいて行われるものであり、一般の保険医療機関での治療同様、皆保険制度の中で被保険者である国民が享受できる制度となっています。
 患者さんが、はり・きゅう・マッサージ等の施術について療養費の支給を受けるためには、あらかじめ保険医から同意書の交付を受ける必要があります。
 同意書は、その施術が療養費の支給対象に当たるのかどうかを保険者が判断するためにも重要ですが、患者さんが必用な施術を適切に受けられるようにするためにも重要なものとなっています。
 本会におきましては、適正な保険取り扱いを推進するために、適宜、会員及び県内有資格者に対して研修や指導等を行っています。
 本制度は、あくまでも患者様(被保険者)のための制度でありますので、なにとぞ趣旨をご理解いただき、今後ともはり・きゅう・マッサージ施術に対するご同意を賜りますようお願い申し上げます。

◆マッサージ施術に対する同意の判断は?

 療養費制度におけるマッサージの適応症は、「一律にその診断名によることなく、筋麻痺・筋萎縮・関節拘縮等であって、医療上マッサージを必要とする症例」とされています。

☆支給対象となるマッサージ


  1. 筋麻痺、片麻痺に代表されるような麻痺の緩解措置としての医療マッサージ
  2. 関節拘縮や筋萎縮により制限されている関節可動域の拡大を促す目的の医療マッサージ
  3. 変形の矯正を目的とした医療マッサージ(四肢の6大関節への変形徒手矯正術)
  4. 脳出血による片麻痺、神経麻痺、神経痛などの症状改善を目的とした医療マッサージ

※ 単に疲労回復や慰安を目的としたマッサージや、疾病予防として行われるマッサージ等は療養費の支給対象とはなりません。

☆医科とマッサージ療養費との並療について

     マッサージの療養費施術においては、保健医療機関で患者さんに治療を行っている場合でも、患者さんに対して同一疾病による同意書を交付することは可能となっています。
     健康保険制度上では医療機関での治療が優先されるので、同意した疾病か否かにかかわらず、患者さんに対して医療上のマッサージが行なわれた場合には、医療機関でのマッサージ施術の保険請求は加納となっています。
     ただし、その同一日に施術所等において同意書に基づくマッサージ施術が行われた場合には、その日の療養費は不支給となります。

◆はり・きゅう施術に対する同意の判断は?

 はり・きゅう療養費の支給対象となる疾病は、「慢性病(慢性的な疼痛を主訴とする疾病)であって保険医による適当な治療手段のないもの」とされています。

※ 以下の6疾患については、療養費の支給対象として差し支えないものとされています。

  1. 神経痛
  2. リウマチ
  3. 頸腕症候群または頸肩腕症候群
  4. 五十肩
  5. 腰痛症
  6. 頸椎捻挫後遺症
※上記の6疾病以外でも、慢性的な(必ずしも慢性期に至らない場合もある。)疼痛を主症とする疾患で、6疾病と同一範ちゅうと認められるものについては、療養費の支給対象となります。

 →*同意書の「病名」欄の「7.その他」に病名を記入願います。

☆医科とはり・きゅう療養費との並療について

     同意する疾病について、保健医療機関において処置や投薬等の治療を行う場合には、治療が優先されるため、患者さんは、はり、きゅうの療養費の支給を受けることができません。
    ただし、同意書の交付に必要な診察・検査及び療養費同意書交付は除きます。

往療の同意について

 療養費によるはり・きゅう・マッサージ施術においては、患者さんが疾病や負傷のため自宅で静養している場合など、外出等が制限されている状況に、患者さんの居宅に出向いての施術(往療)が認められています。

☆往療の必要性を判断する目安

患者さんが独歩による公共交通機関を使用した保険医療機関や施術所への通院や通所が可能か否か?
 →*付き添い等の補助が必要、歩行が不自由であるためタクシー等の使用が必要等

患者さんが認知症や視覚、内部、精神障害などがあり単独での外出が可能か否か?
 →*全盲の患者さんや認知症の患者さん等、歩行は可能であっても患者さん自身での行動が著しく制限されている、循環器系疾患のため在宅療養中で医師の指示等により外出等が制限されている等

その他、介護保険の要介護度や他職種との連携状況等から総合的に判断して単独での外出が可能か否か

同意書の「往療」欄は、往療に関しても同意する場合、「1.必要とする」に○を記入し、「往療を必要とする理由」欄に往療が必要な理由を記載してください。
 同意しない場合は「2.必要としない」に○を記入してください。

同意書記載に当たって…

 来院した患者さんに同意書の発行を依頼された場合には、診察をしたうえで、同意書を交付していただきますようよろしくお願いいたします。
 なお、同意書の交付には、治療の先行(一定期間の治療の有無)が要件とはなっていませんので、初診で同意書を発行しても差し支えありません。

☆再同意について

     保険医から同意書の交付を受け、はり・きゅうまたはマッサージの施術を受けている患者さんが、6ヶ月を超えて引き続き療養費による施術を受けようとする場合も、再度、保険医から同意書の交付を受ける必要があります。
     また、1ヶ月を超えて引き続き変形徒手矯正術を受けようとする場合も、同様に、同意書の再交付を受ける必要があります。

    ※ 再同意の場合であっても、施術の同意には保険医の診察が必要であり、施術の同意には同意書(文書)の交付が必要です。

☆同意書の様式は…


☆同意書の記載に当たっては…


☆施術報告書について

     平成30年10月から、医師と施術者との連携を図る目的で、医師の再同意に際し、施術者に施術報告書の交付が求められるようになりました。
     再同意に当たっては、施術者の作成した施術報告書により、施術の内容や患者の状態等を確認するとともに、直近の診察に基づき再同意いただきますようよろしくお願いいたします。

     また、はり・きゅう・マッサージ施術に当たって注意すべき事項や要加療期間等があるようでしたら、同意書の「注意事項等」欄に記載をお願いいたします。

療養費同意書交付料は100点

 保険医療機関において、はり・きゅう・マッサージ施術に対する同意書、あるいは診断書を交付した場合には、診察に係る初診料あるいは再診料、外来診療料又は在宅患者訪問診療料とともに、同意書の交付に係る療養費同意書交付料(100点)をそれぞれ算定できることとなっています。